「ふくろの味」は、手料理の代わりではなく組み合わせの考え方
「ふくろの味」は、博報堂生活総合研究所が2026年の調査発表で、「おふくろの味」から広がる調理済み食品の身近さを表す言葉として使った表現です。一般に定着した制度上の用語ではありませんが、冷凍食品や惣菜、レトルト食品を家庭の食卓に取り入れる変化を説明しやすいキーワードです。
重要なのは、すべてを一から作るか、買ってきたものだけで済ませるかという二択ではありません。主菜は冷凍餃子、副菜はカット野菜、汁物は自宅で作るといったように、調理済み食品と手料理を一食の中で組み合わせる「ハイブリッド型」が現実的な選択肢になっています。
2026年の調査で見えた「ハイブリッド」の広がり
日本能率協会総合研究所の「メニューからみた食卓調査2026」は、全国の20~69歳の既婚女性2,000人を対象に、2026年5月にインターネットで実施されました。普段の食事について、手作りのメニューと惣菜・冷凍食品を同時に並べる食卓は、「ときどきある」が4割弱、「よくある」も2割強でした。有職主婦では、こうした食卓がある計で7割弱となり、就労と食事準備を両立する場面で使われやすい傾向が示されています。(出典:jmar.biz)
同調査では、完全手作りを「ほぼ毎回」行う人は4割弱にとどまりました。一方、博報堂生活総合研究所の20~69歳男女1,500人調査では、鍋などで温めた冷凍食品を手料理だと思う人が2023年の37.4%から2026年には40.7%へ増加。レトルトに肉や野菜を足したものを手料理と感じる人は51.3%で、調理済み食品に「ひと手間」を加えることで、手料理の範囲が広がっています。(出典:seikatsusoken.jp)
背景には、時間不足と価格上昇、世帯の小規模化がある
冷凍食品の利用も、単なる一時的な話題とは言い切れません。日本冷凍食品協会の2026年調査は、月1回以上冷凍食品を使う20歳以上の男女1,500人を対象に、2月14~15日に実施されました。利用頻度は平均で週1.8回、女性は1食あたり約20.4分、男性は約18.1分の調理時間短縮を実感しています。ただし、利用者に限った調査なので、日本全体の平均と同じ意味ではありません。(出典:reishokukyo.or.jp)
同協会による2025年の国内消費量は302万9,325トン、1人あたり年間消費量は24.6キログラムでした。総務省の2025年家計調査でも、二人以上世帯の「調理食品」支出は月平均13,580円で、名目では前年比4.5%増でしたが、物価変動を除く実質では1.2%減です。支出額の増加だけで、購入量や利用回数が大幅に増えたと断定しないことが大切です。(出典:kyodonewsprwire.jp)
編集部の見方としては、共働き、単身・少人数世帯、調理負担の偏り、食材価格の上昇が重なり、「料理をしない」のではなく「料理の工程を分解して外部化する」方向に進んでいると考えられます。これは将来予測であり、すべての家庭に当てはまるものではありません。
上手な使い方は「主菜を買い、調整部分を自分で持つ」
使いやすいのは、手間の大きい工程だけを調理済み食品に任せ、味や量、野菜の追加を家庭で調整する方法です。例えば、冷凍餃子に具だくさんのスープを添える、レトルトカレーに冷凍野菜やゆで卵を加える、惣菜の揚げ物に千切りキャベツと味噌汁を合わせる、といった組み合わせです。主食・主菜・副菜を毎回完璧にそろえる必要はありませんが、同じ食品に偏らないよう、冷凍野菜、豆腐、卵、海藻などを数日単位で入れ替えると管理しやすくなります。
商品選びでは、価格だけでなく「1食分の量」「調理に必要な電気・油・洗い物」「追加する食材費」「食べ切れるか」を比べます。冷凍食品は大容量が割安に見えても、少人数世帯では余らせることがあります。惣菜は購入後すぐ食べる前提の商品が多く、冷凍食品やレトルトは買い置きに向くなど、保存期間と使う場面も費用の一部として考えます。
- 忙しい日は主菜を調理済みにし、副菜や汁物だけ自宅で用意する
- 味付けが濃い商品と組み合わせる料理は、追加の調味料を控える
- 冷凍野菜や缶詰は、使う量だけ取り出せる商品を選ぶ
- 同じ商品を続けず、主食・主菜・副菜の種類を入れ替える
注意点と誤解を避ける方法
調理済み食品だから危険、手料理だから必ず健康的、とは限りません。市販品は容器包装の栄養成分表示で、食塩相当量、エネルギー、脂質、たんぱく質などを確認できます。表示は商品比較には役立ちますが、1食全体の栄養を自動的に保証するものではありません。持病がある人、食事制限が必要な人、乳幼児や高齢者の食事は、表示だけで判断せず、医師や管理栄養士に相談してください。(出典:caa.go.jp)
保存と加熱も確認が必要です。厚生労働省は、冷凍食品の解凍を冷蔵庫内または電子レンジで行い、加熱する食品は中心部を十分に加熱するよう案内しています。農林水産省も、購入後は表示された保存方法を守り、冷凍・冷蔵が必要な食品を早く適切な温度に移すよう説明しています。商品ごとに「加熱して食べる」「自然解凍可」などの表示が異なるため、自己流で省略しないでください。(出典:mhlw.go.jp)
また、調査の対象者や質問文によって結果は変わります。冷凍食品利用者だけを対象にした調査、既婚女性に絞った調査、20~69歳男女の意識調査を、日本の全世帯の実態として混同しないことが誤解を避けるポイントです。
読者が確認するチェックリスト
「ふくろの味」を取り入れるかどうかは、流行しているかではなく、自分の時間、予算、食事制限、保存環境に合うかで決めるのが基本です。今日の買い物や冷蔵庫の確認では、次の項目から始められます。
- 今週、食事作りに使える時間と、特に負担になっている工程を書き出したか
- 調理済み食品の1食分の価格に、追加食材費や洗い物の手間も含めて比べたか
- 栄養成分表示で、食塩相当量、量、アレルゲン、原材料を確認したか
- 保存方法、賞味期限または消費期限、加熱方法を購入前に確認したか
- 冷凍食品は持ち帰ったら早めに冷凍庫へ入れ、庫内を詰め込みすぎていないか
- 主菜だけで終わらせず、野菜、豆製品、卵、汁物などを無理のない範囲で組み合わせたか
- 持病、アレルギー、乳幼児・高齢者の食事など、個別の配慮が必要なら専門家に確認したか
- 調査の対象者・時期・母数を確認し、「みんなが使っている」という印象だけで判断していないか